うまれる

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すると扉が開き、防護服の男が中に入ってきた。   「お待たせ致しました。それでは中に入りましょう」   私は一瞬安堵した。しかしまだまだ不安は沢山残っている。そして、今から自分がどうなるのか……。想像通りなら検査の結果次第で隔離される。しかし、このままではわからない事が多すぎる……。 私は立ち上がり、彼に付いて行った。 中に入ると防護服の男にシャワーを浴びるように指示された。私は指示通りシャワーを浴びた。 シャワーを終えると今まで着ていた服ではなく別の服を渡された。指定の服でないと無菌室に入れない決まりだそうだ。 私は指定の服に着替えると、次に彼の着ているような防護服を渡された。これも無菌室に入るための決まりだそうだ。私はもたつきながら防護服に着替えた。 防護服を着ると彼に案内され、次の部屋に移った。 その部屋はシャワー室で、防護服についている菌を洗い流すそうだ。シャワーは天井に設置されており、シャワーの下に行くとセンサーが反応し、自動で消毒液が出てくるそうだ。まるで小学生の時にあった、プールに入る前にするシャワーの様だ。 私達は消毒シャワーを済ますと、彼の案内で無菌室へと入った。 そこには20人程の防護服を着た人間が忙しそうに動き回っていたが、私達が入ると一斉に視線が注がれた。皆何かの研究をしていたようだが、手を止め私達を見ている。いや、正確には私を……。 私は視線の中を突き進み、彼の誘導に付いて行った。そして暫く歩くと、彼の足が止まった。   「ここで少々お待ち頂いてよろしいでしょうか?」   「待ってくれ、先刻みたいに私を閉じ込めない保障がどこにある」 私は少し強めに言った。 「先程は失礼しました。説明せず鍵を閉めてしまって……。この事については上の命令でして、詳しくは今から連れてくる者に説明を受けてもらってよろしいでしょうか?あと、今回は決して閉じ込めたり致しませんので」 信用できない! 今まで何も説明されていない。しかし、今から語られるのだ。 ……いや、隔離される可能性だってあるんだぞ。 「どうした谷田部くん?……もしかして彼か?」   私達が言い合っていると後ろから声を掛けられた。
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