1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
――汚子(よごれご)。
彼は仲間からそう呼ばれている。
いや、他人を仲間と思ったことはない。この世に仲間と呼べる人などいない。
汚子のレッテルが、他を寄せ付けない。
彼に味方する人間など、彼が育った育児施設の施設長セナだけだった。
彼女以外は、同期の施設の子等すら彼を遠ざけている。
――なぜ、俺はこの世に生まれてきたのか。
それは、どんなに考えても結論の出ない問いだった。
やがて空は昇る太陽の光に照らされて色をつけていく。
「もう、朝なのか……」
今日も、飽き飽きとした流れ作業が待っている。
重たい気分ととにも重い腰を上げた。
闇より、光刺す時間のほうが辛い。
足を踏み出すと地面は、じゃりっと霜柱のつぶれる音がした。
最初のコメントを投稿しよう!