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「おはよう」
「おはようございます」
棒読みの無機質な挨拶が交わされている。
レイが建物に戻ったとき、すでに朝の活動が始まっていたようだった。
そこへレイが通りかかった瞬間、人々は刹那に顔色を変えた。
――汚子だ。
小声で聞こえないように話されている言葉も内容など聞かずともわかる。
レイは何事もなかったかのように、その場を通りすぎた。
ヴァジュラと呼ばれるこの街では、すべてがシステム管理と、機械の監視によって動いていており、人の生死までもが機械管理の下にいる。
大人が一人死んだら、子供を一人作るというようにだ。
その子供は、データバンクに登録された優秀な人材の精子と卵子からランダムに選ばれて『作られる』
だからすべての子が『親』を持たない。
親というものがいれば、バランスよく公平に子供たちが育たなくなる。
子供たちの性質が親というものに左右されてしまうからだ。
平等な社会を保つためにも、親を子供から排除する。
ヴァジュラでは、男女間の恋愛、結婚を固く禁じていた。
しかし、レイには親がいる。
彼は法を犯して結ばれた男女の間に生まれた自然出産児なのだ。
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