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「あぁ、最近ニュースでやっていたMPSだろう?魔法犯罪を少しでも減らす為に政府が構成した部隊。それがどうかしたのか?」
少年は自分の持つ知識をさらけ出す。
「あぁ、とても重要だ。ではその部隊がまだ決まっていない事を知っているか?そしてその部隊を纏める責任者もまだ、決まっていない」
父は顎に生えた毛をいじりながら言う。
朝だというのにずいぶんと難しい話をするのがこの青葉家の男達だ。
いつもの事なので母と妹の女性達は気にしない。
「責任者?そんなのは政府のお偉いでいいんじゃないのか?
それより稽古とどう関係があるんだよ」
残りの朝食をかきこんだ少年は少しイライラしているのか声が低くなった。
「まぁ聞け。政府は責任者を魔法、武術、そして頭脳すべてが揃っている者にしようと決めたらしい。そして選ばれたのがライ、お前だ」
そのとき少年は耳を疑った。あの真面目な父が嘘をつく筈はない。
だが何故自分なんだ?
確かに自分は魔法も武術もかなり強い部類に入る。
頭もいい方だと自負しているが、まだ14だ。
それに魔法と武術、頭脳なら父の方が適任ではないのだろうか?
そう考えた少年は口を開いた。
「何故俺なんだ?俺より父さんの方が頭も魔法も武術も上じゃないか 」
この時、父と母の心境は辛いものだった。
自分達の愛息子を政府に差し出すのも同義だ。耐えきれるわけがない。
何故、自分達の息子が?
何度も思った。だが息子の魔法、武術は遥か昔に自分達を越えている。
確かに適任だ。
だが、親として息子を渡したくない。
だがこの世の犯罪を少しでも減らしたい。
父、母の考えは矛盾していた。
父は固く重い口を開いた。
「ライ、お前はとうに私を越えている。魔力も魔法も武術も全てにおいてだ。明日、政府から迎えが来る。準備しておきなさい」
妹は話の内容が分からず朝食をちまちまと食べ続ける。
「……わかった」
少年はそう言うと椅子から立ち上がり二階にある自分の部屋へ向かった。
その息子の後ろ姿を見る事しかできない父と母は涙を流した。
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