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いつもなら父が前に座りその隣に母が座る、そして母の前に妹が座っている光景だ。
だが誰もいなかった。
少年は居間を覗く。
ここにもいない。
少年は焦った。別に何があるわけではないが心境から何故か焦りが生まれた。
説明できない焦りだ。
小走りになり家を走る。
客間にたどり着いた少年は深呼吸すると客間を覗いた。
父と母、それに妹もいた。
少年はホッと一息つくと中に入っていった。
少年は客間に入ると客間でお茶を飲んでいる黒いスーツの男に気がついた。
少年は思った。
この黒スーツの男が父がいっていた迎えか と
黒いスーツの男は少年に気がつくと座っていたソファーを立ち上がり少年に近づく。
「おはようございます。青葉 雷様、お迎えに上がらせて頂きました」
黒スーツは言った。
顔を隠すサングラスがピカッと光る。背丈は少年が首を上げないといけない程、高い鼻からかサングラスがとても似合う。
「あぁ」
自分より明らかに年上の人に敬語を使われたのに驚きながらも返事をする少年。
皆は外に移動する。
「青葉様、お別れの挨拶を……」
黒スーツが少年の耳元で言った。
少年は父と母に行ってくると簡単に済ませた。
これは男の意地だ。
流石にこの歳で涙は流せない。
そして少年は妹の方にかけよる。
「雪、俺はちょっとの間、家を留守にしなくちゃならなくなった。
俺が帰るまで留守番できるか?」
少年は妹を抱き寄せながら囁く。
「ちょっとってどのくらい…?」
話の内容がわからなくても妹は感じていた。
大好きな兄が少しではなく当分帰らないと。
「すぐだ。……だから留守番して父さんと母さんを守ってくれ。ユキにしか頼めないんだ。頼まれてくれるか?」
少年は妹を強く抱きしめながら言葉をかける。目には雫が溜まり鼻は少し赤くなっている。
「……うん。ユキ頑張る。けど……お兄ちゃん早く帰ってきてね?」
妹は溢れる涙を兄の胸板で隠しそう言った。
「あぁ」
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