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「王哉、なんでクラブに入らないんだ?」
「お前も入ってないだろ」
「それはそうだけどさ……王哉はまだ続けたいだろ?」
「そんな気はない」
「……そっか……あまり自分を束縛するなよ。さてと、戻るか?」
「ああ」
王哉と渡は片付けてから腰を上げた。屋上には二人以外、誰もいなかった。
王哉はここの学生は無駄に規則を守りすぎだ、と思った。
王哉と渡が教室に戻るとクラスが少しざわついた。
教室では王哉と渡は滅多に喋らない。王哉はいつものように分厚い本を取り出して読み始めた。
渡は他の男子と話をしている。
「斎藤、俺の彼女の後輩が天空に一目惚れしたみたいでさ」
「その子を王哉に紹介してほしいってか?多分、紹介して1分も経たない内に玉砕されると思うよ」
渡は笑いながら言った。男子はニヤリと笑った。
「大丈夫、その子も天空に負けない位の成績でさ、運動神経も抜群だし、かなり可愛いし───」
「その前に、王哉がその子に会うかが問題なんだよ」
渡は困ったように言った。
「何か方法は無いのか?」
男子は顔をしかめながら訊いた。
渡は少し考えてから口を開いた。
「その子の成績と運動神経はどのくらいかな?」
「えっ?成績は分からないけど、100m、12,56だって言ってたよ」
「あ~、残念!王哉より速かったら、興味本意で紹介しようかな?って思ったんだけど」
渡は笑いながら手を額にやりながら言った。
「ちなみに……天空の記録は……?」
他の男子の一人が渡に恐る恐る聞いた。
「王哉?確か、10,24だったと思う」
「「「「「……化け物じゃん……」」」」」
その場に居た、全員が王哉を見た。
放課後
王哉と渡は教室を出て校門まで来た時、渡は一人の女の子に呼ばれた。
「まただ、王哉は来ないのにな……じゃあ王哉、バイバイ」
渡に頼んで王哉を連れて来てもらおう、というのが狙いだろう。
実際、何度もそんな事があった。しかし彼はその呼び出しに応じた事はなかった。
渡は女の子について行った。その先にはもう一人、気の弱そうな女の子がいた。
彼女は王哉と目が合うと、顔を赤くして目を反らした。
「帰るか…」
彼は渡を見送ってから校門を出た。
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