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入学式の日に出会った少年、高梨太陽に翌日から会うことはなかった。
俺は樹の守護をしなければならなかったし、他の隊員が見つけた揉め事を処理するのも役目だったから忙しくて捜す暇は無かった。そのせいか、今日の出来事を訊いて凄く悔しかった。
ことは数分前に溯る―――
「お疲れ様です」
と仕事帰りの樹にお茶を注ぐ阿久津。香りで目を覚ましたと思われる咲乃がこちらに寄ってくる。ちなみに時間は深夜一時くらい。
生徒会メンバーも守護隊員もソファーや机で各々に寝ていて、起きている二年の天河が皆に布団をかけている…この光景はもはや日常茶飯事だ。
で、
お茶を飲んでいた咲乃が
「今日の報告ね」
と樹に話を持ち掛けた。
話の始まりは恋人である鈴宮の浮気疑惑だった。そこから、新しい同室の奴の話に変わる。
「いや~笑顔が明るくてさ、でもって可愛くて…恵程じゃないけどね?」
はっきり言って興味は皆無だった。が、
「確か、高梨君ですよね名前…」
と退室間際の天河が俺に手榴弾のような言葉を投げて出て行った。
…………高梨……?
太陽……だよな…明るい笑顔…………
俺は怒りと悔しさで握ったカップの柄を砕きそうだった。
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