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私は食卓について朝食をとる。隣に友里が座っているので気持ちが落ち着かない。
「あなた、今日は何でそんなにそわそわしているの?」
台所で作業をしながら妻が話しかけてきた。
「幸江、」
「え?なあに?」
妻が水道の蛇口を閉めてこちらを振り返る。
「今日、何日だ?」
「なに言ってるの。9日じゃない。新聞にも載ってるでしょう。」
信じられない…しかし、確かに日付は9日だ。
「見て。図工で作った作品を先生にほめられたの。」
友里が手に持った木工細工を私に見せる。
「ああ…よかったな。」
「友里、そろそろ行かないと遅刻するわよ。」
友里はイスから降りて玄関へと向かう。
時計の針は7時50分をさしていた。
日付が変わるまで、娘は死の影につきまとわれる…ルーニーの言葉が脳裏をかすめた。
「友里、ちょっと待て。」
靴をはこうとする友里を呼び止める。
「今日は、お父さんと一緒に学校へ行かないか?」
「えーっ、なんで?恥ずかしいよ。」
友里はあからさまに嫌な顔をした。
「あなた、急にどうしたんです?」と妻も不審がる。
「ほら、最近子供を狙った犯罪が増えてるじゃないか。ちょっと、不安でな。」
「だからって今日一緒に行くことないじゃない。」
いいや、今日でないと駄目なんだ。今日だけでいいんだ。
どう思われようと、娘は私が守る。
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