3/3
前へ
/66ページ
次へ
私は食卓について朝食をとる。隣に友里が座っているので気持ちが落ち着かない。 「あなた、今日は何でそんなにそわそわしているの?」 台所で作業をしながら妻が話しかけてきた。 「幸江、」 「え?なあに?」 妻が水道の蛇口を閉めてこちらを振り返る。 「今日、何日だ?」 「なに言ってるの。9日じゃない。新聞にも載ってるでしょう。」 信じられない…しかし、確かに日付は9日だ。 「見て。図工で作った作品を先生にほめられたの。」 友里が手に持った木工細工を私に見せる。 「ああ…よかったな。」 「友里、そろそろ行かないと遅刻するわよ。」 友里はイスから降りて玄関へと向かう。 時計の針は7時50分をさしていた。 日付が変わるまで、娘は死の影につきまとわれる…ルーニーの言葉が脳裏をかすめた。 「友里、ちょっと待て。」 靴をはこうとする友里を呼び止める。 「今日は、お父さんと一緒に学校へ行かないか?」 「えーっ、なんで?恥ずかしいよ。」 友里はあからさまに嫌な顔をした。 「あなた、急にどうしたんです?」と妻も不審がる。 「ほら、最近子供を狙った犯罪が増えてるじゃないか。ちょっと、不安でな。」 「だからって今日一緒に行くことないじゃない。」 いいや、今日でないと駄目なんだ。今日だけでいいんだ。 どう思われようと、娘は私が守る。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1310人が本棚に入れています
本棚に追加