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「少し待っていただけますか?まだ寝巻のままなんです。」
私はインターホンの受話器を置いて部屋に戻り、あたふたと着替えを始めた。パジャマ姿で話すわけにはいかない。
着替えを済ますと、私は玄関へ行ってドアを開ける。
そういえば、この男性の名前を聞くのを忘れていた。娘の名前を聞いた途端、頭の中が真っ白になってしまったのだ。
「あの、どちら様でしょうか?」
「ルーニーと呼んでください。皆、私をそう呼びます。」
ルーニーと名乗った黒髪の男性はかなりの好青年で、一見すると日本人のように見える。ルーニーとは本名なのだろうか?そもそも、素姓の分からない人物を信用していいものか……
いや、今はそんなことを考えている場合ではない。
「娘のことで話があるとか。」
「はい。」
ルーニーは家の中へ入ると、玄関に腰をおろした。
「あ、どうぞおあがりください。」
私は下駄箱からスリッパを取り出そうとしたが、ルーニーは
「いや、ここで充分ですよ。」と言って唐突に話を切り出してきた。
「昨日友里さんに起こった出来事を、どうお思いです?」
私の脳裏に、悪夢のような光景が蘇る。
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