逢えぬ親への恋しさ

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慣れないその間は辛く苦しく何とも言えないが、時間が解決して、いつの間にか養護施設の生活に順応してくる。 養護施設の生活になれたらもう同期の子供や先生達が 〝第2の家族 〟 になる。 施設で楽しく遊んだり、愛情をもらったり、集団生活の訓練になったり。 家庭では学べない楽しみや発見がある。 慣れれば施設はとても楽しい所である。 その反面、 〝夜は独りになる時間〟 親が稀に面会に来たその日は親との楽しい時間を思い出す。 施設の子供の誰もが寝静まっても眠れず、思い出が寂しさへと変わり、こらえた涙を押さえきれずに泣いてしまう。 それだけ家族と居る時間は何よりも貴重な時間だから。 ほんの30分の面会でも、子供は夜中に思い出して泣いてしまう。 その時はいくら施設の仲間の僕達でもその仲間をなだめる事は出来ない。 逆に周りの仲間も親を思い出して泣いてしまう事もある。 そんな暮らしは絶対に毎日家族と居れる人には分からない感情。 辛さも悲しみも、全て先生達がカバーしきれるものじゃない。 当時の僕はかなりの寂しがり屋だった。 6才になった頃だろうか? 2才まで居た幼児部屋を出たばかりの僕は、夜中に目が覚めて消灯の時間が過ぎても眠れずにもう夜も遅く、先生も残っていても何処にいるかも分からない。 僕は行くあてもなく施設をさ迷う。 みんなはもう立派に一人でベットで寝られるというのに。 僕が幼児部屋を卒業したその日だろうか、今でもしっかり覚えている。 夜中に施設を巡回する宿直の先生にバッタリ会った。 僕は怒られると思ってその場所から逃げようとした。 でも宿直の先生は優しく僕に言った。 「ねぇ、独りじゃないよ。淋しい時にはいつでもおいで。夜中に来ても先生は怒らないから」 僕は涙がこぼれた。 先生の言葉に安心出来たからなのか、それは分からない。 でもずっと一人で怖かった。 泣くのをジッと耐えて施設をさ迷う僕は本当はその言葉を待ってたんだ。
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