逢えぬ親への恋しさ

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「ねぇ先生、なんで幼児部屋を出なきゃいけないの?」 「それはサダが小学生に上がったからだよ、もうお兄ちゃんになったんだから周りのお兄ちゃんみたいに一人でベットで眠れるようになろうね。」 「うん......、でも夜になると怖いんだもん。」 「部屋のお兄ちゃん達が怖い話しとかしたりしたのかな?」 「違うよ、みんなが寝たら独りで淋しいの。」 「淋しい時はいつでもおいで、慣れるまでは先生が助けてあげるから」 「先生なんでここの先生なったの?」 「子供が好きだからだよ」 布団の中で先生と二人そんな話をしてたっけ。 親が居なくても、僕には先生達が守ってくれたから今の僕がいるのだろう。 僕には母親がいないので母親の愛を知らないが、女性の先生が僕にしてくれたことが母親の愛情なのだと思う。 寂しくても、辛くても君を見ていてくれる人はいるのだ。 〝そう、君は独りじゃないよ 君が望みさえすれば君を助けてくれる人がいるのだから 涙が止まらない時は大声で泣くといい 淋しい時には仲間同士バカな事をやりゃいい 血の繋がりなんて関係ないんだ 人が人を助けていく世の中だから だから仲間を大切にして、今までしてもらったことを忘れちゃいけない 君が受けた辛い悲しみをもう繰り返しちゃいけないよ 君が周りを助けてあげるんだ そっと君が手をさしのべれば相手が立ち直るきっかけになるから〟 僕には施設の思い出がとても大きい。 時々今でも夢で出てくるたくさんの楽しい思い出達。 もう一度子供の家に帰りたいと何度願ったことだろうか。 その夢が最近実現化したことで更に僕は施設を恋しく思った。
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