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「――――で、シュウ君はそのお姉ちゃんと来たの?」
長い廊下を歩きながら、彼女はシュウ君の話しを聞いていた
シュウ君はお姉ちゃんと二人で旅館に来ているらしい
でもそのお姉ちゃんが全然構ってくれず、暇を持て余しているという事だった
歳を聞けば九歳
エネルギーに満ちたシュウ君には温泉は退屈な場所のようだ
「そうだよ?
でもお姉ちゃんは大事な用事があるからって…
僕、もう三回もお風呂に入っちゃったよ」
なるほど
シュウ君は遊ぶ場所として温泉を利用しているのか
「うーん…シュウ君に温泉の良さはまだ分からないかな?
でもシュウ君のお父さんやお母さんはどうしてるの?」
確かにそうだ
シュウ君くらいの子供の傍には親がついているのを見た
なのにシュウ君はお姉ちゃんと二人で来たと言う
「あ、僕は親いないんだ」
シュウ君はそんな言葉を普通に言った
悲しみや寂しさといったものを何一つ見せずに
「あ…そうなんだ……」
普通でいられなかったのは彼女の方だった
さっきまでの笑顔が固まったまま動かない
「うん、だからお姉ちゃんに連れてきて…あ!お姉ちゃんだ!」
シュウ君が急に大声をあげ、前方を指差した
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