心を残した場所

36/38
前へ
/111ページ
次へ
「二人なのに広いじゃない、無駄に」 何故か部屋に付いてきた雫 「雫、温泉に入るんじゃなかったの?」 彼女は邪魔者を見るかのような目で雫を見る ゴロゴロするつもりだった彼女にしてみれば、騒がしくなって迷惑なだけのようだ 「そんなの何時でも入れるから ……六花くん、そんな警戒しなくたっていいじゃない」 彼女の背中に隠れる僕に、雫が半眼で睨む 「アンタは前科持ちだからね」 彼女は僕に抱き着き庇うような格好をとり、目を鋭くして威嚇する いつもと違う彼女の匂いに包まれて、なんだか幸せな気分です そんな光景にシュウ君が 「ねぇ、お姉ちゃん達みっともないから止めなよ」 「「ゔっ」」 子供に呆れられ、二人は声を詰まらせた 「お兄ちゃんも、そんな猫みたいに目を細めないで」 あ、気持ち良くてつい… シュウ君はまだ小さいのに随分としっかりしている お風呂場の時と違う一面に、僕はなんだか感心した 「そ、それより雫 温泉に来てする“仕事”って何なのよ」 彼女が話題を変えようと雫に話を振る 「仕事は……仕事よ」 ――? 雫の“仕事”に関する反応は、さっきと同じで何か変だ
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加