心を残した場所

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「だから、巫女が温泉でどんな仕事するか訊いてるのよ」 歯切れの悪い雫に彼女が問い詰める ポンポンとテンポ良く喋る雫が印象に残っている僕は、喋ることを躇っている姿が不自然に見えた 「……極秘任務よ」 搾りだすような雫の声 「お姉ちゃんスゲー! なんか警察の人みたいだ! ―で、『ゴクヒニンム』ってなに?」 何故かテンションの上がったシュウ君だが、要するに雫は何も話してくれないらしい 「何よそれ まさか如何わしいことを…」 「桜さん」 何だか話しづらそうな雫を気にしながら、僕は彼女の言葉を遮った 「な、何? まさか雫の味方するつもり?」 僕を抱き締めたままの彼女が、怒りとも不安ともとれる表情で見つめてくる 「無理矢理は駄目です」 誰にだって言いにくい事の一つ二つはあるんだろうから 「………分かったわよ」 分かった それが嘘じゃないというように、彼女は腕に少しだけ力を込めた 「ま、その内ちゃんと話すから待っててよ」 雫は気まずそうな顔で彼女に言うと、シュウ君の襟を掴む 「ほら行くよ 二人の邪魔になるでしょ」 いや別に邪魔では… 「なんの邪魔?」 いや別に何をするでも… 「これから二人はイチャイチャするのよ」 いや、雫さん…
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