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幾つかの『信号』なる光る物体を過ぎた辺りで道は大きく広がり、それに伴い飛び込んで来る色に圧倒された
テレビでは何度もみた大きな建物や、『車』という動く箱の群れ
直接触れた色や音に僕の足は止まり、息苦しさを感じる
「ん?どうしたの?
びっくりしちゃった?」
心配そうに覗き込む彼女
「…うん、ちょっとだけ…」
その言葉に強がる
本当はもう帰りたいくらい、街の奏でる音と溢れる色にあてられていた
「大丈夫、行きましょう」
お腹にぐっと力を入れ、足を前へ運ばせる
「辛くなったら言ってね?」
彼女は不安そうに僕の頭を撫でる
「はい」
今できる精一杯の笑みを浮かべ、彼女の手を引いた
「あ、こら
六花は道知らないでしょ?」
僕に手を引っ張られ騒ぐ彼女
『デート』とは楽しいもの
少女マンガからはそう受け取れたんだ
僕が顔をしかめたら、きっと彼女は楽しくないだろう
歩くダウンジャケットは、それなりに使命感を持っている
通り過ぎる人々から予想通りの視線を浴びながら、僕達は大きな建物に入って行く
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