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店内に入ると、そこは光の渦
そして沢山の匂いを連れた人の群れ
――怖い
思わず彼女にしがみついた
彼女は少し驚いたような顔をした後
「もしかして怖い?
大丈夫だよ、言ったでしょ?
私がちゃんと守ってあげる」
彼女は僕と頬を合わせ、耳元で囁いた
その一言に、その声に、そしてその匂いにさっきまでの恐怖心が消えていく
大丈夫、彼女を感じていれば怖くない
そう思う事でやっと足元が見えるようになった気がした
「はい、もう平気です
早く変身しに行きましょう」
目を隠すニット帽を少し上げ、僕は白い歯を見せる
「よし!凄い格好にしてあげるんだから!」
そのスイッチは押してない
僕の顔を見て妙なテンションを見せる彼女
現在、十分に凄い格好の僕としては、世間で言う所の『普通』に変身したいのですが…
そんな戸惑いが何だか心地よくて、息苦しさもいつの間にか忘れていた
不釣り合いな2人はその滑稽さも一つの空気にして、場違いな洋服店へと向かって行く
僕の身長に合うのかな?
あれこれ考えてる僕は見ていなかった入口の看板
『ファンタジーキッズ』
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