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薄明かりの照す店内は昼を前にして静かで、さっきまでの騒がしさを洗い流してくれる
『喫茶 こってり』
意味はわからない
だが壮観に
僕の欲求と願望を今満たしてくれているこの物体は、僕の中にきっと意味を残すだろう
『チョコレートぱふぇ』
芸術とは、こういうものに与えられるべき表現ではないだろうか
花でいえば『蘭』を思わせるそのフォルム
チョコレートとアイスを主体とし、果物をトッピングする事で新たな角度を創造したその感性
「脱帽だよ……」
感嘆のため息が止まらない
「アイス……溶けるよ?」
3杯目のコーヒーに口をつけた彼女がボソッと言う
「うん……勿体なくて…」
食べたら無くなる
真実はいつも残酷だ
「また来れば食べれるよ」
『ぱふぇ』の容器を指で優しく鳴らし、彼女は笑う
「しのびない」
スプーンでチョコレートのかかるアイスをすくう
「構わんよ♪」
肘をつき、僕を楽しそう見つめる彼女
「……美味しい」
甘さと冷たさが喉を潤していく感覚に、小さな感動を覚えていた
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