触れる世界

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幾つもの『初めて』を経験し 幾つもの『新しい』感動を知り そしてその度、僕が『形』になっていく気がした 不透明な僕に、彼女が与えてくれる様々なものが、触れるその手に色をつける 「たくさん遊んだし、そろそろ帰ろっか?」 街灯が灯り始めた街並みを眺め、彼女は僕の手を握る ありがとう 聞き取れない程の僕の気持 「ん?何か言った?」 首をかしげる彼女 やっぱり大丈夫だ 彼女にはちゃんと伝わってる 僕に向けられる瞳がそう確信させてくれる 「はい、帰りましょう」 握られた手に力を込めた ――ポ その結び目に 雪が小さなしるしをつける 「あ、降ってきたね…」 彼女が見上げる空を、つられるように僕も見た 白い結晶達は道路や建物、人の頭や肩にその軌跡を残す (…………ナサイ) 「え?」 確かに聞こえた誰かの声 「ん?どうしたの?」 不思議そうな顔の彼女 「あ、いえ、何でも無いです」 どう説明していいか解らず、言葉を濁した (…………ナサイ) また聞こえる 誰?何を伝えようとしてるの?
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