序章

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真綿のような雪 風に流されながら 静かに景色と呼ばれる『色』を消していく ただ白く 広げた手の平を優しく濡らす ――ここは… 震え舞う雪を目で追い 見上げた空もまた一面に白く それが怖くて 体を包む布をきつく握った ――僕は… 「君は…」 ――ここで… 「何をしてるの?」 少し遠目に見える初めての色 木肌のような髪の色 黒く澄んだ瞳の色 少し赤い頬の色 その一つ一つが 胸の奥にしみて恐怖を溶かす 「何で…」 ――あなたは 「君は…」 ――何で 「白いの?」 ――僕を見るの? 雪に遮られた距離は 言葉をもって縮まったとして 今向けられる手の平を 雪のように濡らしてしまう ――それでも僕は 「来る?」 ――その色に触れたかった 「うん」 無数に降り立つ六花の群れ 重なり連なり やがては消える結晶の花 それが僕に あなたがくれた名前
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