視る者

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…………… 「……美味しいわね」 料理を一口含み雫が言う 「また腕を上げたわね…六花」 同じく桜 「本の通り作っただけです」 本当の事だからね 今日のメイン 『ロールキャベツ』 食卓に向かい合う3人には妙な緊張感が流れていた 彼女以外の人と初めて食事をする僕 雫の言動や僕の体調に気を配る彼女 そして ニンジンの影に脅える雫 朝の騒動とは反対に、口数の少ない静かな時間 でも穏やかとは言い難い 「六花くん 家事もままならない桜のどこが良かったの? やっぱり顔かしら?」 突然且つ予想外の質問に箸が止まる ―どこが好き……って事かな 僕は無意識に視線を彼女へと向けていた それに気づき彼女も僕の顔を見る その僅かな沈黙に雫が乗じる 「彼氏さん? まさか答えられないの? やっぱり本当は…」 「六花は照れてるのよ! 付き合ってまだ1週間のホヤホヤなんだから!」 雫の追撃に思わず彼女が身を乗り出す 「1週間!? 桜、あなたそんな短期間で男連れ込むほど餓えてるって言うの?」 上げた足を見事に取られる 「え?あ、う、餓えてるわよ! もうムラムラの村興し…」 「桜さんであることが…です」 僕の言葉に2人は止まった
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