視る者

9/15

37人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
最早立ち上がるのは時間の問題かと思われた2人は、前傾姿勢のまま僕を見る 「急な質問だったので、少し考えてしまいました」 頭をポリポリと掻きながら言う僕に2人は 「私………であること?」 ポカンとする彼女 「………つまりどういう事?」 小首をかしげる雫 「えーと…… 桜さんの目とか匂いとか髪の色とか…… チョコレート買ってきてくれたりとか頭を撫でてくれたりとか…… ハンバーグが焦げてたりとか辛いものが苦手なところとか…… 多分、辛くて苦しいのに、僕に心配させないように頑張って笑ってくれる優しさにとか……です」 言い終わった後にはもう、険悪だったさっきまでの空気はなくなっていた 固まって動かない彼女をよそに、雫が声のトーンを1つ落として聞いてくる 「それはつまり……『全部』って事かしら?」 まじまじと僕の顔を見る 「えーと……そうなりますね」 嫌いな所が思い浮かばないという事はそうなんだろう 笑顔を見せる僕に固まっていた彼女が動き出す 「六花ぁー!! 私も好きぃーー!!」 瞳に涙を浮かべた彼女が抱きついてきた 「私の事、ちゃんと見てくれてるんだね…嬉しいよ…」
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加