視る者

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僕を胸に抱き、彼女は少しだけ泣いた 「……なんか、アホらしい」 雫は拍子抜けした顔で僕達を見ると、椅子を直しロールキャベツを食べ始めた 「何よ、ただの『のろけ』じゃない、聞いてるこっちが恥ずかしいわよ…」 ブツブツと呟きながら次々に料理を口に運ぶ雫 「…あの、桜さん? 早く食べないと冷めちゃいますよ?料理が」 大きな2つの膨らみに顔を固定されて動けない 「あ……うん、そうだね せっかくの美味しい料理が勿体無いよね」 彼女はいつもの笑顔を作ると、僕の頭を一度だけ撫でて席に戻った 先程とは違う静かな食卓に、何だか気まずさを感じていた ―変な事言ったのかな? 人に気持を伝える事は難しいと良く見聞きする 何より僕には過去が無く、故に自信が無かった 「そんな顔しなくても大丈夫よ 桜は喜んでるし、あなた達の関係を疑う気ももう無いわよ」 僕の考えを察したのか、雫がチラッと視線を送る 「うん、嬉しかったよ本当に 疑いも晴れたし、これで一緒にお風呂に…」 「「それは駄目」」 初めて雫と意見が合った瞬間だ
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