視る者

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彼女のとはまた違う匂いと感触 手で後頭部を支えられながら、押し付けるように唇を重ねてくる雫 ―僕の『中』に何かが入ってくる… 精神と呼ぶべき場所に異物が入り込むような感覚 ――止めて!苦しい! 混雑する自分とそうでないモノの不協和音に心が悲鳴をあげる ―もう……限界…… 意識がシャットダウンする寸前、雫の唇が離れた 「な……何なのよコレ…」 雫の顔色はその瞳のように青い 「何も無い………『白』 そんな馬鹿な話し… じゃあ、あなたはどうやって存在しているって言うの!?」 畏怖を刻んだ雫の表情は、僕の一線を切断した 「何……それ…… 僕は自分の事知りたいだけなのに…… ここに存在(い)る事も認めてはいけないの?」 何のために 何のために 何のために 否定と肯定が僕の有無を交差する 「だってあり得ないもの… 『色』が無い存在なんて……」 口を震わせ後ずさりする雫 多分もう、雫の目は僕を人として見ていない 「僕は…僕は…僕は……」 ――ガチャ 「何してるの!!」 バスタオル一枚の姿でリビングに飛び込んできた彼女がきっと 僕が掴める唯一の絃
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