視る者

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「六花は怖いのよ 初めて見た時も、そして今も」 もたれているだけの僕の背中を、変わらないリズムでトントンと叩く 「記憶が無い…というのは?」 僕の腕を小さく擦りながら雫が聞く 少しくすぐったい 「うん、無いの…… だから心細いのよ 記憶に拠り所が無いから」 彼女が代弁してくれる それで救われていく気がした 「だから六花を覗かないで この子が何かを思い出すまで」 ―ぎゅ 彼女の腕に少し力が入る 僕を包むように抱きしめる彼女を見て、雫は納得したような諦めたような表情をする 「わかったわ…… ちょっと意地悪が過ぎたみたい 六花くん、ごめんね? …って肌すべすべで気持いい」 撫で回すように僕の腕から背中に手をいれる 「ひゃうっ」 突然の感触に変な声が出た 「こら!必要以上に触らないでよ!私のなんだから!」 慌てて雫の腕を掴み引き剥がそうとする彼女 「何よ!少しくらいいいじゃない!大体触れと言ったのは桜でしょ!」 ムキになって手を押し込む雫 「うひっ」 脇腹に雫の手が移動する 「だから『必要以上に』って言ってるじゃない! ああ!!! そういえば『視た』のよね? って事はキスしたのね!私の六花に!襲うなって言ったのにー!!」 ポカポカと雫を叩く 「ご馳走様でした! 美味しかったわよ? 六花くんのク・チ・ビ・ル♪」 雫の挑発が彼女を煽る 「知ってるわよ!! 何回私が六花の隙をついて…ってまさか舌まで入れ…」 バスタオル一枚の彼女にもたれ 僕は蚊帳の外を満喫していた
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