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「ああー痛い!何よ!
年増のヒステリーは見苦しい限りね!」
叩かれた頭を押さえ彼女の消えた部屋に向かって雫が怒鳴る
そんな雫の熱気とは反対に、僕は凍えそうな感情に震えていた
「怒らせた……傷つけた?」
雫とキスしそうだったから?
マンガであった『浮気』ってこの事なの?
散らかし探すように、彼女が怒った意味を漁る
見つけて、理解して、謝って…
じゃないと……
それが出来ないと…
「……嫌われる」
――捨てられる?
最悪の事態しか思いつかない
気持を整理するには知識も経験も足りなすぎた
「何、深刻そうな顔してるのよ
まるで私が悪者みたいじゃない」
うつ向く僕に雫が文句を言う
――あなたのせいです
少なくとも一端を担った事は確かだろう
雫のせいにしてしまえば楽になれるのだろうが、拒絶しきれなかった自分にそんな資格が無い事くらいは分かっていた
声は喉元で止まり、顔を上げるのが精一杯だった
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