不安定

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「ふん、『嫌われた』? 本気で言ってるの?六花くん」 こめかみに指をつけ、雫は眉間にシワを寄せる 「だって…怒らせてしまいました……とても」 涙を流し、声を荒げる程 彼女の表情を思い出し、また胸が苦しくなる 「ええ、怒ってたわね凄く でもそれは桜が六花くんの事が好きだから… 大切だから怒ったのよ」 好きだから…怒る? 「離したくないから、失いたくないから騒いだの どうしていいか解らなくて」 僕を失いたくない? 解らない 僕は何を必要とされているのか 「…僕には解りません それだけ想われる理由が…… 自分がどういう役割を持っているかも」 どうして彼女が僕をここに置いているのかも、怖くて聞いた事が無かった 「理由、ねえ… 六花くんの疑問が解けるか分からないけど、教えてあげる 聞いた?桜の両親の事」 雫は家族で写る写真を手に取りソファーに座る 「はい… もうこの世にいないとだけ」 何だかそれ以上は 聞いてはいけない気がしたから 「うん、死んだの ちょっと変わった病気でね」 少し冷めたお茶を飲み干し 雫は大きな息を一度だけ吐いた
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