不安定

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「またキスしたの?」 どうやら『話し』については興味がないらしい……が 「してません」 「何回したの?」 この質問もどうかと思うな 「してません」 「正直にいいなさい」 どうやらまだ機嫌は良くないようだ……じゃあ 「5回です」 「だから正直に……ええっ!?」 ちょっとした方向転換です 「そんなにしたの!?1日で!」 「嘘です」 小分けにしたらいいのかな 彼女は恨めしそうな目を向ける 「…騙したわね」 そう言って再び布団に潜ろうとする ―駄目、話が出来ない そう思った僕は自然と体が動いた 彼女の腕を掴み、いつも僕に迫ってくる唇を今度は僕が押し付ける 「―――ん!」 彼女は驚いて一瞬だけ身体を硬直させたが、すぐに僕の背中に腕を回し抱き寄せた 僕の中に彼女の匂いが充満して、どうしようもない程満たされた気持になる 「…何で六花から?」 唇を離した彼女が聞いてくる 「桜さんが泣くからです」 僕の知らない彼女は きっと今までいっぱい泣いてきたから 「大丈夫です、桜さん 僕はずっと… 桜さんが出て行けと言ってもここに居ます」 いずれ僕が過去を知り それが今を許してくれるのなら
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