雪の声

3/21

37人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
―カエリナサイ いつもの囁きではなく はっきりとした音としてそれは聞こえてきた ―カエリナサイ 空耳や幻聴ではない これは僕に向けられた言葉 帰る?………何処へ? 雪の吹き荒れる中 無理矢理目を開けて、声のする方へと目を配る しかし開いた瞼の先の視界はただ白く、下からも舞い上がる雪に再び目を閉じる事となる ―カエリナサイ 3度目の声が聞こえた途端 風が止み、そして雪も止んだ 風が無くなったのを肌で感じ、ゆっくりと目を開ける 風が吹く前と同じ風景がそこにあるだけで、声はもう聞こえてこない 「帰りなさい…って 今更何処へ帰るっていうの?」 せめて僕の記憶を返して やっと彼女といられる理由を見つけたのに、何で帰らなければいけないのか… 「僕は彼女の傍にいる 僕は……帰らないよ」 まだ解らない事だらけで、何が正解で誰が正しいかなんて知らないけど 僕は僕の為に此処にいる 彼女と僕はそれを望んだんだ
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加