雪の声

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――ぎゅ 彼女はコートも着たままベッドに倒れる僕に被さってくると、力強く抱きしめる 「あ、ち、ちょっと苦しい…」 『重い』とは言わないほうが身のためのような気がした 「ちゃんと『お帰り』って… 待っててくれないと駄目…」 あの一件以来、不安定さを見せてはいたけど最近は落ちついてきた そう思ってたけど 彼女はまだ不安なんだね 「ごめんなさい… あ、今日は『すき焼き』にしようと思ってたんです 準備は出来てるんで…… どいてもらえます?」 本当はもう少しこのままでいたいけど、彼女には早く笑顔になって欲しかった 「………すき焼き? うん!食べる!早く!」 ガバっと体を起こし、彼女は僕を引き起こす 彼女はお肉が大好きなんです 「着替えて待ってて下さい すぐ用意しますから」 元気になった彼女を見て 僕も何だか元気になる 互いが違う不安を抱えていて でも互いが元気を分け合える 「あ、六花……」 ―そんな関係では駄目ですか? 「はい?」 ―僕は情けないですか? 「今日の罰 今日は一緒に寝なさい」 ―甘えては駄目ですか? 「…………はい」 不完全な僕が望んだ 小さな小さな幸せなんです
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