雪の声

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彼女が落ち着いたのはしばらくしてから 「お風呂、入ってくる」 一頻り泣いた後にポツリと言ってリビングを出た 彼女の涙と引っ張られたせいでヨレヨレになった上着を残念そうに眺めて僕は台所へ向かう 少しホッとしたのか、渇いた喉に水道水をコップいっぱいに注ぎ一気に飲み干す 「…ゴク…ゴク…ぷはぁ!」 うーん、スッキリ! ごちゃごちゃになっていた頭の配線が少し整理された気がした 「早く元気な桜さんに戻るといいな」 彼女は強がる事も出来ないほど不安定になっている 雫が訪れ、少し騒いだかもしれない でもそれだけで彼女が繕ってきたものはハリボテのように脆く崩れてしまった 僕にはそう感じた 「僕が頑張って元気づけなきゃ」 いつも助けてもらってる僕はそんな使命感が沸々と… 「確か僕の立場って 『イソーロー』もしくは『ヒモ』と言われるものなんだよね…」 男として情けないものだと記憶している そうなんだ… せめて彼女の為に料理以外にも役に立たないと 「僕に出来る事 難しい話しより先ずはそれからだよ」 悩んでもしょうがない そう割り切る事で楽になった気がする
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