雪の声

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―ガチャ ソファーでテレビを見ていた背後からドアの開く音が聞こえる どうやら彼女が入浴を終えたようだ 「どうですか?少しはスッキリと…」 そう言って振り向いて見た彼女の姿に絶句した バスタオル一枚だけを身体に巻き付け、髪からポタポタと水滴を滴らせながら無表情で立っている ご機嫌…斜め? とても良好とは思えないその雰囲気に言葉が詰まる 僕の戸惑いを気にした風もなく、彼女はスタスタとこっちに来ると呆然とする僕からリモコンを奪いとりテレビの電源を切る 「約束、一緒に寝る」 斜め上から見下ろされる迫力ある彼女の視線 髪を伝い床に落ちる水滴が僅かな沈黙を埋める 「……髪はちゃんと拭いたほうが…」 最初から僕の意見なんて聞く気もなかったのか、ヨレた上着を掴むと無言のまま引き摺っていく ああ、切れちゃう切れちゃう 上着の命運は今日で絶たれたと確信し、されるがままに彼女の部屋まで来ると電気も着けずベッドに投げ出された 「ゲホッ…ゲホッ…さ、桜さん?」 急な暗闇に視界が閉ざされ彼女の姿が見えない ―パサ え?その音って… それが何かを結論付ける前に、柔らかい感触が僕を包む 風呂上がりの彼女の匂いがいつもより強く感じる だって… 「さ、桜さん…裸ですよね?」
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