雪の声

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暗闇と言えど目の前のものが分からない程ではない 彼女の大きな胸 それ以外の何物でもないだろう 冷たく濡れた髪が僕の顔にかかり、彼女の吐息が鼻をくすぐる 僕の鼓動は高なり身体は緊張で固まっていく 「僕……お風呂まだなんですが…」 彼女が黙っているのでなんとか話題をと思って言った言葉だ 「駄目… 六花の匂いが消えちゃうから」 そう言ってギュッと腕に力が入る 彼女の胸に顔を挟まれる形で呼吸が… 「さ、桜さん…息が…」 その声に彼女は素早く反応して身体を少し引いた 「ごめん…でも寒い…」 そりゃそうでしょうね あなたは素っ裸ですから 「ほら、ちゃんと布団に入って下さい…ああもう髪を拭かないから…」 彼女に布団を被せ、暗闇に慣れてきた目でバスタオルを見つけると、それで彼女の髪を拭いた 「六花も布団に入るの」 髪を拭かれながら僕を布団の中に引きずり込む 仕方なく横向きで向かい合う形で髪を拭いているがやりづらい ぎこちない手つきで拭いていると彼女は僕の手を掴んだ 「もういい… くっついていい?」 今頃確認されても… そう思ったけどその言い方が可愛かったから 「どうぞ」 そう言って彼女の腰に手を回した ――あ、そうだった 「六花のエッチ」 彼女のお尻に手が当たってる事で裸なのだと思い出した 「ご、ごめんなさい!」 慌てて手を引くとその手を彼女はパッと掴み、またお尻へと戻す 「いいの…ずっとこうしてて」 そして更に身体を密着させてくる 「あ…えと……はい」 彼女の体温を感じる 今はちょっとドキドキする 「おやすみ六花 だぁーい好き」 何度か聞いた言葉だけど、いつ聞いても僕を満たしてくれる 「僕も好きです」 偽りのない言葉 飾りを付けるほど器用ではないけど 「……『だい』がない」 飾りも時には必要だということらしい
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