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―ピロロロロロ、ピロロロロロ
昼食を終え
訪れた眠気に身を任せようとしていた午後の2時
聞き慣れた電子音にソファーから体を起こす
「…とうとう来たか」
彼女は必要なものがあるからと、買い物のため外出中だ
―ピロロロロロ、ピロロロロロ
「僕だってもう電話の対応くらい出来る」
ここに来てもう1ヶ月
何度か彼女が使っているのは見ているし、ドラマや映画にも度々登場している
―純粋なる好奇心
彼女には口酸っぱく『触るな』と言われているが、あの機械の先には誰かが存在していて、どこにいても会話が出来る代物だと知って日に日に興味が高まっていたのだ
「千載一遇とはこの事か…」
覚えたての言葉だ
足早に電話機の前に移動すると、音と一緒にピカピカと点滅するランプに胸が高鳴る
―ピロロロロロ、ピロロロロロ
「では……失礼して」
―ガチャ
受話器を取って耳に当てる
そして念願のセリフを今口にする喜びに、受話器を持つ手が震えた
「…もしもし」
言ったぞ『もしもし』!
意味は全然わかりませんけど!
僕的にはもう感無量なんだけど、通話たるもの相手がいる
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