僕と彼女と日常と

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おでんの匂いが鼻孔をくすぐり 炊飯器のランプが『炊飯』から『保温』に変わる ――ガチャ 「たっだいまー!」 頭に雪を乗せた彼女が白い息を弾ませ帰って来た 「お帰りなさい」 寒さで赤く染まった頬が好きだ でも僕の視線は彼女の左手に持たれたビニール袋の中に見えるチョコレートに釘付けだ 「うわぁ!いい匂い! はい、お土産のチョコレート」 目の前に差し出されるビニール袋に自然と手が伸びる 「しのびない」 「構わんよ って、テレビを最近知ったばかりなのに詳しいのね」 テレビは僕に情報をくれる欠かせない存在だ 「今日はおでんです 早く食べて暖まってください ほら、頭に雪が積もってますよ」 背伸びして彼女の頭の雪を払う ――チュ 下唇に柔らかい感触 その一瞬、彼女の匂いが僕を包む 「また『キス』ですか?」 彼女に拾われて4回 好意のしるしと教えられた 暖かくて、嫌じゃない 「ん?おでんのお礼だよ」 そう言って微笑む彼女 少女マンガで習ったキスとは意味合いが違うようだ 「はい、どういたしまして じゃあ座って待っててくださいね、今ご飯運びますから」 でも嫌じゃない 彼女が僕にくれる好意のしるし
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