心を残した場所

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―――――――――― なんだなんだなんだナンダ? 景色が動く? いや、動いているのは… 「ふおぉぉー!」 スパーーン! 「六花、静かにね?」 ―旅行仕様 ウサギさんスリッパ 《ブラックバージョン》登場 僕は今、『電車』という乗り物に乗っている 相変わらず沢山の人の中に身を置くのは苦手だけど、この乗り物に足を踏み入れた瞬間に気分が一転した 沢山の窓、沢山の椅子 この長い部屋が乗り物なのか? その疑問も動き出した時、感動へと変わった 窓から見える景色がゆっくりと滑らかに動き出し、やがて平行に流れていく ガタンゴトンと 定期的に訪れる振動を連れて 「ふ、ふあぁぁー!」 スパーーン!! 「次は《こっち》でいくよ?」 彼女の右手が硬く握られる 胡桃を砕く圧がそこには込められているのを思い出す 「電車は何処へ向かってるんですか?」 サッと姿勢を正し、ズレた帽子を直す あの拳は危険だと判断したから 「うーん…私の生まれたトコ」 彼女窓の外を眺め、少し言葉を選んだ風に間をあけて答えた 「桜さんの生まれた場所…」 頭に浮かんだのはリビングに置いてある一枚の写真 彼女がまだ 《親》と暮らしていた場所
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