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「美味しい『ぱふぇ』って、桜さんの家の近くなんですね」
僕が口にできるのはこれが精一杯だった
本当はもっと違うことが聞きたかったけど、それを声にする勇気が無かった
「うん、そうなんだけど…
実は今日泊まる場所を提供してくれたのって親戚の叔父さんで、その叔父さん旅館を経営しているの
たまには顔見せに来い…って」
―シンセキ?オジサン?
僕の知らない単語が出てきた
それを察した彼女が直ぐに付け加える
「お母さんのお姉さんの旦那さん…って分かりづらいかな?
優しい人で、とても良くしてくれたの…まぁ、お世話になった人ね」
彼女の表情が柔らかくなる
それだけでその人が彼女にとって大切な存在何だと理解した
「安心しました」
彼女は両親を失ったけど、彼女を思う人がまだ居る
雫もその一人だろう
「そう?なら良かった」
僕の言葉をどう解釈したのか分からないけど、彼女は嬉しそうに笑った
「じゃあ、そろそろお弁当食べよっか?」
――え?
頬が引きつるのを感じた
「…桜さん……が?」
ケシ炭ハンバーグが脳裏をよぎる
「心配しないで?
ちゃんと車内で買うから♪」
あ、電車でお弁当を売ってるんだ…
「――でも
今の9ポイントだからね」
表情を変えず声の温度だけが数度下がる
―しまった
せめて今日は
ポイント4倍デーではありませんように…
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