心を残した場所

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《車》とは《電車》とは違い、スイスイとあちこちに移動出来るようで、目に映る景色もコロコロと変わる これはこれで楽しいな そう思いながら殺風景な景色が変わっていく様を楽しんでいだ 「あ、信号だ…」 既に学習済みの機械を目にして呟く 銀世界にポツンと浮かぶランプを一つ過ぎると、次第にその数が増えていき、立ち並ぶ建物の姿が見えてくる 「信号が珍しいのかい?」 僕の呟きが気になったのか、オジサンこと倉田さんが運転しながら聞いてきた 「彼はド田舎から出てきたばかりで」 答えたのは僕ではなく彼女 僕が変な事を口走る前に阻止したいようだ 「ハハハ、ここも随分と田舎なんだがね」 どうやら《イナカ》とは人や建物の少ない場所を指すようだ ―彼女の生まれた場所 それは小さな温泉の町で、旅館が幾つもある観光地だと倉田さんが説明してくれた 昔は観光客で賑わっていたこの土地も、《フケイキ》というものによって、今は閑散とした空気に包まれている ―と、いうことらしい 「変な臭いがする…」 閉めきった車内に《悪臭》とも言える臭いが漂う ―チラッ つい横に座る彼女を見る 「え?な、なに見てるのよ!? ち、違うわよ!これはねー…」 「硫黄の匂いだよ」
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