37人が本棚に入れています
本棚に追加
《車》とは《電車》とは違い、スイスイとあちこちに移動出来るようで、目に映る景色もコロコロと変わる
これはこれで楽しいな
そう思いながら殺風景な景色が変わっていく様を楽しんでいだ
「あ、信号だ…」
既に学習済みの機械を目にして呟く
銀世界にポツンと浮かぶランプを一つ過ぎると、次第にその数が増えていき、立ち並ぶ建物の姿が見えてくる
「信号が珍しいのかい?」
僕の呟きが気になったのか、オジサンこと倉田さんが運転しながら聞いてきた
「彼はド田舎から出てきたばかりで」
答えたのは僕ではなく彼女
僕が変な事を口走る前に阻止したいようだ
「ハハハ、ここも随分と田舎なんだがね」
どうやら《イナカ》とは人や建物の少ない場所を指すようだ
―彼女の生まれた場所
それは小さな温泉の町で、旅館が幾つもある観光地だと倉田さんが説明してくれた
昔は観光客で賑わっていたこの土地も、《フケイキ》というものによって、今は閑散とした空気に包まれている
―と、いうことらしい
「変な臭いがする…」
閉めきった車内に《悪臭》とも言える臭いが漂う
―チラッ
つい横に座る彼女を見る
「え?な、なに見てるのよ!?
ち、違うわよ!これはねー…」
「硫黄の匂いだよ」
最初のコメントを投稿しよう!