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「ねぇ、明日買い物行こ」
洗い物を済ませ、テレビを前にしての穏やかな空気
不意に置かれた彼女の言葉
「……買い物
それは外に出るって事ですか?」
微かに涌く不安と好奇心
拾われた日以来、僕はこのアパートから出た事が無かった
「そ、デートしよ?
六花の服も必要だし」
――『デート』
両想いの者同士、手を繋いだり腕を組んだりしながら街を歩き、買い物したり何か食べたり夜景をみたりの二人一組の行動
少女マンガで勉強済みだ
「デート………ですか
僕が外に出て、大丈夫でしょうか?」
僕は少し他の人達と違う
髪の色とか、他にも…
少し表情に翳りを見せる僕に、彼女は優しく抱き寄せて言う
「大丈夫、私が守ってあげる
それにいつまでも
ワンピースじゃ嫌でしょ?」
はい、嫌です
あの日、僕が身につけていたのは厚手の布一枚だけだった
そんな僕に彼女がくれたのは、昔着ていたという白いワンピース
僕のサイズに合うのがそれしか無かったようだ
「…………行きます」
テレビでもマンガでも
ワンピースを着た男はいなかったから…
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