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「よし!温泉に入ろう!」
元気を取り戻した彼女が窓に向かって拳を上げる
「ゼー…ハー…フゥ…ハァ…」
その横で僕は酸素を貪っていた
なんて言ったかな?
ベアハッグ?
そうだ、これは抱擁ではなくプロレスの技だ
だって殺傷能力があったもん!
悲鳴を上げる肺を落ち着かせながら、ダメージを軽減してくれたダウンジャケットに感謝した
「…ふぅー……温泉って大きなお風呂ですよね?」
ようやく整った息で言葉を作る
「そっか、六花は初体験だもんね?臭いは知っての通りだけどスッゴク気持ち良いよ」
コートを脱ぎ、黒のセーター姿の彼女はクローゼットを開けてコートを掛ける
「ちょっと楽しみです」
僕も彼女に倣ってダウンジャケットを脱ぎ、ハンガーに掛けてもらう
帽子も脱ぎ、白い髪が薄く視界を隠した
ちょっと伸びたかな…
「はい、六花
これ浴衣ね?子供用で大丈夫だと思うけど……うん、バッチリ!」
緑色に白で模様の描かれた浴衣を僕の体に当て、彼女は満足そうに頷いた
子供用……
ふっ、もう慣れたさ…
彼女の浴衣の色は水色で、どうやらそれが大人用の色という事のようだ
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