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何ら躊躇いもなくセーターを脱ぎ、浴衣に着替え始める彼女に背を向け、一応脱衣シーンから目を逸らす
常識として女性の露出は直視するものではないらしい
――が、ならば一言かけて欲しいと思うのは僕だけだろうか
「別にいいのに」
彼女はそう言うが、それが万人向けの台詞とは思えないので現状維持
彼女が特別なのかな?
などと思ってもみたり
「よし!行こうか!」
水色の生地に紫の花が咲く浴衣に身を包んだ彼女はいつもより大人びて見えた
「あ、はい」
ちょっと見とれてしまった
大浴場という大きなお風呂へ向かう途中、すれ違った数人に奇異な眼差しを向けられた
僕と彼女の組み合わせがおかしく感じられたのか、僕の白い髪を不思議に感じたのか
いずれにしても心地よい視線とは言い難い
「いちいち気にしないの」
僕の頬をキュッとつまんで彼女が言う
「ふぁい」
大福のように伸びた頬で空気の抜けた声で返事をする
相変わらず僕の変化を見抜くのが早い彼女に、驚きながらも嬉しく思う
僕は彼女の為に在れば良い
そんな気分になってしまうのは、彼女の気遣いによるものかもしれない
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