心を残した場所

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「お兄ちゃん、次はコッチ!」 「あ、うん」 僕より頭一つ小さな子供に手を引かれ、三つ目となる浴槽へと向かう 僕を『変』呼ばわりしていた子供…シュウ君は、何故か僕に近づいてきてアレコレと温泉の説明をしてくれた シャワーの出し方や泡がブクブクと出ている風呂の楽しみ方など 「これは何のお風呂?」 連れて来られた浴槽を前に、とりあえずシュウ君に聞いた 「へへへ~ ま、入ってみてよ」 悪戯っぽい笑みのシュウ君 これ、なんか嫌な予感 明らかに良くない事が待っているとシュウ君の顔が言っている 「いや、でも…」 浴槽を前に踏ん切りが着かない僕にシュウ君は―― 「えい!」 ―ドン バシャーン! 「冷たぁぁぁぁ!!」 中は水だった 「あはははははは! お兄ちゃんって面白いね!」 子供って…… 子供って恐い!! 人を水に突き落として無邪気に笑う姿に、怒りよりも恐怖を覚えた旅行での出来事 「ひ、酷いじゃないか!」 水風呂から這い上がり、ケタケタ笑うシュウ君に文句を言う 「情けないなー、お兄ちゃん 子供の悪戯じゃないか」 なんてタチの悪い… 自分の立場を知った上での行動とはなんと狡猾な
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