心を残した場所

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「今度は大丈夫! 温泉で僕が一番好きな場所」 シュウ君は悪びれた表情など欠片も見せず、次なる場所へと僕を誘う 「本当に?」 少し臆病になった僕は、シュウ君の言葉に疑念を抱きながらも着いていく シュウ君は僕の問いに答えることなくスタスタと進み、出入口とは別の浴室を仕切るドアを開けた 「……え?外?」 そう、外 湯気が風に舞い、石造りの浴槽が姿を現す 「露天風呂だよ」 シュウ君はそう言って温泉に入った どうやら今度はちゃんとお湯が入っているようだ 「ロテン風呂?」 僕も浴槽に入り、シュウ君が口にした言葉を繰り返した 「そう、外にあるお風呂だよ ほら!景色が凄いでしょ?」 シュウ君は浴槽から身を乗り出して、浴槽から見える景色に嬉しそうだ 「……本当だ、綺麗…」 お風呂場のあるこの場所は、旅館の最上階である四階 見下ろす風景は町の雪景色 爽快感と そして懐かしさに似た感情が… 「あ、雪だぁ!」 突然シュウ君が大きな声を上げた その声に湯船に浸かる人達が一斉に上を見上げる 僕もつられてネズミ色の空を見上げた ――!? 聞こえる あの声が、また ―ココハ、アブナイ
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