清州城主

5/6
405人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
「………」 ただ黙って、信長の顔を見つめる濃姫。 この状況に、戸惑っていた。 信長は、濃姫の顔を見つめ返すと、いきなりフッと鼻で笑った。 「なんだぁ?その顔はッッ」 「!!!…何だって何よ!?」 「ボサァーって口開けて。お濃のこんなに不細工な瞬間、初めて見たぜ」 ボサァーって口開けてんのは貴方でしょ?! 濃姫は眉をしかめる。 その表情を見て、信長はにんまりと笑う。 どこまで憎たらしい奴!? 「……ま、でもやっぱそういう所が可愛いんだけどな」 と言って、濃姫の肩を抱く。 「な……最悪!!」 頬を真っ赤にしながらも、キッと信長を睨み付ける濃姫を、信長は楽しそうに、さらに強く肩を抱いた。 ……………息が止まりそう……。 「……お濃」 すぐ耳元で囁く声。 背筋がぞわっとするけど、心地悪いものでは無かった。 「……何…?」 上目遣いに信長を見上げる。 「…言ったろ?俺は死なない。殺されない」 優しい声………。 どうやら彼は、心配する私を気遣って、安心させようとしたみたい………。 これが……彼の優しさ………? 「……うん…」 今は彼の優しさに甘えよう。 濃姫は、自らの身体を信長の肩にもたれた。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!