揚羽の嫁入り

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今日は挙式。 帰蝶はまだ相手の顔すら知らない。 女中達が慌ただしく走り回る。 小見が帰蝶に花嫁衣装を着せていた。 「母上、相手はどんなお方なの??」 「尾張の国の織田家の長男と聞きいたわ」 「ふうん……」 「それに、あなたは正室よ。嬉しく思いなさい」 「はい。母上」 小見は角隠しを帰蝶に被せた。 「帰蝶。綺麗」 「……ありがとう。母上」 着替えが終わったと聞いて、道三も入って来た。 「見違えたぞ。帰蝶」 「父上……ありがとう」 だが、道三は俯いた。 「………すまんな。帰蝶……」 帰蝶は首を横に振る。 「帰蝶は後悔しておりません。父上、どうかお顔を上げて下さい」 「立派になったな。帰蝶……」 道三と小見は、目を会わせて頷いた。 「帰蝶」 「はい」 「今日からお前は、『濃』と名乗りなさい」 「……濃…」 「美濃の国の高貴な女性と言う意味よ」 小見が帰蝶に綺麗な石の首飾りを渡した。 「幸せになりなさい。お濃」 小見は、そう言うと出ていった。 その瞬間、帰蝶は濃姫となった。
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