揚羽の嫁入り

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道三は、小見が居なくなったのを確認すると、言った。 「濃。相手はどんな者か聞いたか……?」 「はい……尾張の国の織田家長男と、先程母上から……」 「大うつけ者らしい」 「……はい?」 うつけとは……… 「馬鹿、アホ、間抜け、あんぽんたん、ノウタリン、トンマ等と言う意味の、うつけですか………!!?」 道三はすまなそうに頭を下げた。 「その通りだ」 「そんな…………」 濃姫はがっかりしたような表情をする。 「濃、手を出しなさい」 濃姫は素直に手を出す。 道三は白い紙に包んだ、『何か』を渡す。 それを開けて……濃姫は驚いた。 「父上……これは………」 小太刀だった。 「お濃、もし、相手が本当にうつけならば、お前がその手で刺し殺せ」 「どういう事です?」 「うつけは……お濃には釣り合わぬ。相手がうつけならば、お前に安々と殺される。もし、本当はうつけでは無かったら……どうにかして殺され無いだろう」 「相手を試せ、と言う事ですね」 道三は頷いた。 「わかりました……。本当にうつけならば、刺し殺して見せましょう」 濃姫は小太刀を懐にしまった。 「姫様!時間ですよ!!」 女中の声。 「はい。今行きます」 濃姫は父に一礼し、小走りに出ていった。 「本当に……すまない」 道三は彼女の背中に向かって呟いた。
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