揚羽の嫁入り

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挙式が終わり、二人は部屋に取り残された。 既に袴をぐちゃぐちゃに着て寝ている信長に、濃姫は話しかけた。 「尾張のうつけ者…と言われてたのは、貴方だったのね」 「そうともそうとも」 信長が寝たまま答える。 そういえば、前会った時にも何度も思った。 何だこいつ。 馬鹿か。 と。 何であの時気付かなかったのだろう。 何度も馬鹿と口に出したのに。 「……あっ…毛皮……」 濃姫は思い出す。 「うん?」 「あの日、貴方から借りた毛皮。返そうと思って、ずっと保管してたんだけど……」 取りに行こうと立ち上がる。 だが信長は手をひらりと振った。 「いいってそんなの。どうせお前は俺のモノ。毛皮なんて、共用すればいいさ」 「…そう?」 濃姫はまた座って、言った。 「そういえば、何故、貴方は私を……?」 気になっていた事を聞いた。 「可愛い子ちゃんだったから、に決まってんじゃん」 「…………は!?」 ……さすが、馬鹿だ。 「今までいろんな大名の娘を紹介されたけど、どうもシックリこなくってさぁ」 ………馬鹿だ。馬鹿過ぎる。
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