うつけを殺せ

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隣には、大イビキをかいて眠っている信長が居る。 濃姫は懐の小太刀を掴んでいた。 『……うつけを殺せ…』 父親道三の言葉を思い出す。 今なら………殺せる。 濃姫はそっと、小太刀を鞘から抜いた。 小太刀の刃先を、信長の首筋にあてる。 さようなら、馬鹿者…… 「………」 だけど手が止まる。 あの日の冬、二人で遊んだ光景が浮かんだ。 雪で真っ白になった頭をほろいながら、無邪気に笑う少年。 今殺すなんて…………残酷すぎないか。 「う……ん………餅げっとぉ~♪」 いきなりの寝言にビクッとする。 「何が餅ゲットよ」 やっぱりコイツは馬鹿者。 父上の言う、うつけだ。 なのに………何故刺せない? 濃姫は小太刀を握り直した。 そして、上に振り上げ………目をつぶって、突き刺した。
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