うつけを殺せ

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「………」 濃姫はまだ、小太刀を離さない。 「………逃げないの?」 「逃げる??知らねぇな」 「本ッッ当……うつけ者が」 濃姫は苦笑する。 「そんなの構わねぇ。それに、お濃、お前は俺様を殺せるか?」 「勿論」 「それは無理」 信長は無邪気にニカッと笑う。 「なんで??」 「だって俺………馬鹿だからしぶといし」 「はぁ?」 そっちかよ!! 思わず呆れたため息をつく。 だが、信長は急に真面目な顔になった。 「お前に殺されるほど暇じゃねぇし、俺はきっと、戦場で死ぬ……」 寂しげな瞳。 まだ幼いのに、戦という重い足枷………。 「私が、貴方を殺すまで、私は貴方を守りましょう」 急に、濃姫は突拍子の無いことを言った。 「……お濃?」 「私以外に、貴方を殺そうとする者は…潰す」 へっ、と信長は笑った。 「時々ブラックな発言するじゃねぇか。さすが蝮の凶暴女」 「それ要らない!!」 いつの間にか、濃姫は小太刀を鞘にしまい、懐に戻していた。 この父上の言い付けは……保留にしよう。 まだ、私は彼の本性を知らない。 父上はうつけを殺せと言った。 もし、彼がうつけじゃなかったら………。 「私が貴方を本当にうつけだと確信した時……その瞬間が貴方の命日」 信長はニッとする。 「生きてやるよ……俺に命日等……来ない」
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