父親

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信秀の葬儀が始まった。 なのに信長は来ない。 法師の読む経の中に聞こえる、家臣達の小さな声……。 「うつけ殿は何処へ行ったのだ?」 「父上の葬儀だと言うのに、恩の無い男だな」 「いっそのこと、信行様を跡継ぎにした方が、この国のためかと………」 そんな話を、濃姫は不安気に聞いていた。 「………あの馬鹿……」 そして呟く。 「平手殿、あの人は何処へ……?」 「いくら探しても居ないのです……信秀様の後継者だというのに……あぁ、情けない……」 平手は頭を抱える。 「悪いのは平手殿ではありません。あの馬鹿殿です」 濃姫は怒ったように言った。 「ご焼香です」 端に座っている僧が平手に耳打ちする。 こういうものは跡継ぎがまず最初にするのが常識だが………。 「すぐ来ますから……少々お待ちを……」 平手は焦りを隠すように冷静を装って言う。 その時……… 「信長様ッッ!!!」 ガラッと言う音と共に、信長が現れた。
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