父親

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信長は家臣らが開けた道を悠々と歩く。 いつもぼかーっと開いている口をキリリと一文字に締め、目はしっかりと、父、信秀の祭壇を見据え、真っ直ぐに歩く。 あら。 あんな馬鹿でも、ちゃんとしたら結構良い男じゃない。 何故か濃姫はそう思ってしまった。 「ささ、信長様。ご焼香を」 「ああ」 手を伸ばす信長。 家臣達は勿論、驚いた表情を見せている。 そうか、やっぱり父上は父上だもんな。 あんなうつけでも、弔いの気持ちぐらい………………………………………………………………………………………ガッシャーン。 「信長様ァッッ!!」 平手の悲痛な声。 家臣がしんと、沈黙。 「あの………馬鹿殿………」 さすがの濃姫も、額に手を当てた。 信長は、信秀の祭壇に焼香を投げつけたのだった。 信長は満足気な表情で、手をぽんぽんと払うと、また悠々と出ていった。 その瞬間……… 「なんたる無礼な!!!!」 「うつけにも程があるわぃ!!」 「あ…あんなのが跡継ぎか!?」 「尾張の将来がおもいやられるなぁ!」 家臣達は怒り、騒ぎ出した。 土田御前は眉をしかめてそれを眺めている。 平手はあわあわと、頭を下げていた。 濃姫は大きく溜め息をつくと、信長を追うために外に出た。 懐の小太刀を握りしめて………。
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